やまなみグッズ つくり手をたずねて
足柄茶染め
○天然の茶葉が醸し出す微妙な色合い新製品を生み出した茶農家の若嫁パワーの源は、毎日飲むお茶にあり?

広がる茶畑
東名高速道路の都夫良野トンネルのすぐ近く、国道二四六号線から少し入った場所に、うっかりすると見過ごしてしまいそうな小さな無人駅、JR御殿場線の谷峨駅があります。駅前から人家の間の細い道を通り抜け、西へ向かって斜面を上がっていくと、林に囲まれた山あいのわずかに開けた土地を埋め尽くすように茶畑が広がっています。ここが神奈川の名産百選にも選ばれ、その香りと味の良さで人気のある「足柄茶」の産地です。
関連リンク: やまなみグッズ「足柄茶染め」
○霧が育む茶の香り
北側を丹沢山系、南側を箱根の外輪山に囲まれた山北町一帯。中央には昭和53年に三保ダムの建設によりできた丹沢湖、南には「日本の滝百選」「全国名水百選」に指定された「洒水の滝」を有するなど、豊富な水資源に恵まれた地域です。
ここはまた、霧の多いことでも知られています。早春の天気の良い日に東名高速を走っていると、この一帯にさしかかったとたん、突然、深い霧に出くわして、驚かされることがあります。ドライブにはやっかいものの霧ですが、実はそれがおいしいお茶を作るためにはとてもよいのだそうです。
「新芽が生育する時期に、強い日差しを浴びると芽の硬化が進んでしまうんです。霧は日差しを防いでお茶をじっくり育ててくれる。それで、香りの良いお茶ができるんです」と語るのは、この地元のお茶を使って染め物に取組む「いずみ会」の細谷康子さん。細谷さんは自身も足柄茶が大好きで、毎日欠かさず飲むといいます。
○はじめは料理の研究から

「いずみ会」のみなさん
「いずみ会」は、もともと茶農家の後継者を育てるという目的で、若いお嫁さんたちを中心に、昭和57年に発足した会です。最初は、地元のお茶を使った料理の研究のために集まっていたそうですが、数年前、お茶を使って、染め物ができないかと、勉強を始めたといいます。
まずは、製品を見せていただきました。茶、黄、緑の3色の絹のスカーフ、いずれもとても優しい色合いですが、思ったよりも濃く染まっているのに驚きました。この色は洗濯をしても色褪せたりすることがないそうです。
「茶色は食品などの乾燥剤に使われる消石灰、黄色はミョウバン、緑色は酢酸銅、うぐいす色はクロムと、それぞれ媒染剤(繊維に色素を定着させるための薬)を変えることで、色の違いを出しているんです」と細谷さん。
基本的には、お茶の葉を20分ずつ、3回煮出して色素を抽出するそうですが、緑色だけはやり方が少し違うそうです。
「緑色を出すのにはとても苦労しました。お茶の種類によっても緑の色が微妙に違ってくるんですよ」と細谷さん。
○地域のリサイクルにも?
スカーフに鼻を近づけて匂いをかぐと、とてもよいお茶の香りがします。色といい、香りといい、身につけているだけで、元気が出てきそうな気がします。実際、お茶染めには「除菌効果や消臭効果があるので、靴下などにいい」そうです。
現在、製品化されているのは、このスカーフと型染めの木綿のハンカチ、靴下だけですが、本格的高齢社会を迎えた今、お茶染め製品の用途は、病院用のシーツや枕カバーなど、もっといろいろなところに応用できそうです。
これからの活動予定は?
「秋の整枝で出る葉、今までは捨てていたんですが、それを使って染めてみたいですね」と細谷さん。若嫁パワーが産みだした新製品が、地域のリサイクルにも貢献する、そんな日がくるといいですね。