宮ヶ瀬湖
2018月7月30日

伝統産業を現代に語り継ぐ「糸の町半原」の生き字引 ー レインボープラザ(愛川繊維会館) 落合勝司さん

 

宮ヶ瀬ダムから車で10分ほど。自然豊かな中津川沿いにある愛川町は、古くから「糸の町半原」と呼ばれ、伝統産業が盛んな地域です。
蛍が舞い初夏を感じる気候の中、里の案内人のひとり、レインボープラザ(愛川繊維会館)館長 落合勝司(おちあい・かつじ)さんを訪ねました。

土日は駐車場が一杯になるほど、多くの来場者がある「レインボープラザ(愛川繊維会館)」は、この日も体験教室でたくさんの小学生が訪れていました。横浜や大和・横須賀など、神奈川県で幼少期を過ごしたことがある人は、もしかしたらこの場所をすでに訪れ、そして落合さんに会っているかもしれません。

戦後すぐからこの地の変遷を見て来た落合さんに、この地域の伝統産業をどのように守ってきたのか、お話を伺いました。

高度成長期を生き抜いた、試行錯誤の数々

玉のように光る絹糸。

「レインボープラザ(愛川繊維会館)」があるこの土地は、かつて養蚕(ようさん)が盛んで日本屈指の撚糸業地(ねんしぎょうち)として発展しました。現在は「手織り/藍染め・草木染め/紙漉き/組紐」といった体験教室が開催され、多くの人がここで手作りの楽しさを感じ、伝統産業に触れています。

 -レインボープラザ(愛川繊維会館)館長の落合勝司さん

隣町津久井で生まれた落合さんは、こちらへ勤めて60年。…ということは? とお歳を聞くと、なんと今年で78歳! (2018年取材当時) 。4〜5年前まで体験教室の案内の現場に立っていたという、とても年齢を感じさせないエネルギッシュな方です。

落合さんが就職した昭和33年当時は就職難で、ご縁があったのがこの場所とのこと。働ける場所があればどんな場所でも厭わなかったとか。
そんな落合さんの大きな転機となったのは30代 、責任者のポストに任命された時でした。

 -長い歴史に役目を終えた機材の数々。(コーン巻)

 -今も現役で動くものもあります。中央部分が回り、筒型に糸が組まれていきます。(丸編機(まるあみき))

-水車を動力として動かしていた八丁式撚糸機は愛川町指定重要文化財に指定されています。

「とにかく色々やってきた。撚糸業以外の仕事もやったし、無我夢中でした。日本の高度経済成長期、集団就職で地方からやって来た人が慣れない土地で孤立するのを防ぐため、共同給食や共同宿舎、また近所の家に相談相手になってもらう制度も作りました。いわゆる金の卵(若年中卒労働者)のドキュメンタリーでテレビ放映をされたこともあります。」

戦後復興から高度成長を経た、変化が激しいこの60年という時間を生き抜いてきました。その経験から試行錯誤を経て、今の「レインボープラザ(愛川繊維会館)」があります。

まちの伝統産業を守り抜きたい

-歴史上の出来事と、ここで起きたことを次々に教えてくれました。

今のような体験教室を始めてから「まだ“たったの”22年。」と語る落合さんに、きっかけを教えていただきました。
衣類は97%が海外輸入品、国内生産は3%未満となり、生産拠点として日本が衰退していくなかで、何 かやらないといけない、伝統産業を復活させたいと思っていました。

最初に手をつけたのは『紙漉き(かみすき)』。愛川町に海底(おぞこ)という地名の集落があり、和紙の産地だったことから復活させようとスタートさせました。

次に『染め』。複数種類のある染め方の中から、藍染と草木染めを選びました。

-手染めした藍は煮る工程を踏まえると色止め効果があります。

そして一番大事なのは糸で、『手織り(織物)』と『組紐』。

これらの4つの体験を始めました。

-両手両足を使い、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を1段ずつ組み合わせていきます。

 -組紐を体験できる機械。手動で時計回りに回します。

「織りといえば京都、藍染めは徳島、近隣では静岡、山梨、茨城、群馬(桐生)…と、とにかく全国各地へ体験しに行っては、そこで得た経験を活かしてこの体験教室を組み立てました。」

子供でも楽しく完成させることができ、また職員以外にも30人のスタッフが全工程を説明できる今の体制は、実際に目で見て、体を動かし、実体験を元に学んだノウハウがたくさん詰まったプログラムだからこそ。

子供たちの笑顔と清流に囲まれて

この日もバス4台がレインボープラザ(愛川繊維会館)前の駐車場に停められ、多くの小学生が4種の体験に訪れていました。目の色を変えて真剣に取り組む姿や、「できた!」と喜ぶ姿が印象的でした。

「最終的に出来上がって子供が喜んでいるのを見るのが嬉しい。ものすごく嬉しい。染めは基本的なやり方を教えて、あとは自由にやってもらうんですが、こちらが驚くようなすごくいい柄ができるんです。」

 -子供たちからの感想文が壁一面を埋め尽くしていました。

「『自分の作ったものを大事にしたい。』『すごく楽しかった。』そんな感想をお礼文でもらうんです。簡単な文章だけど、一生懸命書いて送ってきてくれるのが嬉しい。」と語る落合さんのエネルギーは、子供たちのこういったお手紙から得ているように感じました。

最後に、レインボープラザ(愛川繊維会館)のおすすめの過ごし方を教えていただきました。
「昼に河原でお弁当を食べる人が多いよ」
それを聞いて目の前の河原へ。宮ヶ瀬湖から流れ込む清流がとても気持ちよかったです。

 -昔はもっと川幅があった、と宮ヶ瀬ダム建設前の川の様子も教えてくれました。

 -川底が奥まで透けて見えるほど綺麗な水(中津川)

時代の変化と共にたくましく生きて来た落合さん。次は「紙漉きで卒業証書を自分で作る」ことをやってみたいとのこと。200年の歴史があるこの場所が今も存在し続けるのは、落合さんのような、伝統産業を守りたいという気持ちと、なんでもやりがいを持って楽しむ気持ちによって紡がれ、受け継がれて来ました。

「糸の町半原」の“生き字引”とも言える落合さんに、会いに行ってはいかがでしょうか。

 -明るいスタッフのみなさん。ありがとうございました!

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